アラエさんと私は、昨日買ったスカーフを首に巻いて出かけた。さすがに自分たちだけでは頭に巻くことはできずに、ただ首にゆるく巻くだけにした。私たちはアフマドさんが手配してくれたタクシーに乗り込んで、どこを走っているのか分からないまま、少しの緊張とわくわくを抱えていた。
到着すると、アフマドさんの奥さんと3人の子どもたちが出迎えてくれた。ひんやりとした石の壁の四角い間取り。奥の洗面所から洗剤の匂いが漂ってくる。L字のソファには光沢のあるピンクがかった白いカバーがかけられ、その手前にローテーブルが置いてある。壁にはツルを伸ばした観葉植物と結婚式の写真。プロペラが2方向についた球状の扇風機は、初めて見る形状だ。
奥さんはベージュのカフタンを着ている。襟ぐりに施された金糸の刺繍が細やかで美しい。とても優しそうな笑顔をする人だ。娘のサラちゃんは、胸にツタンカーメンがプリントされたオレンジ色のカフタンを着ている。スーベニアショップで見かけたデザインだ。耳には小さなゴールドのピアスをしている。通りで見かけた子どもたちもピアスをしていた。お守りのような意味があるのかもしれない。彼女は年齢の割に大人びた顔立ちで、英語も話す。弟は6歳くらいだろうか。お母さんにべったりで離れたくない様子だ。
私たちはソファに座るように促され、温かいもてなしを受けた。青いグラスに注がれた白いジュース。果肉の白い果物。これまではずっと、生水に気をつけていたけれど、こういう場面では手をつけないわけにはいかない。これは運命に身を任せるしかないと判断した。グラスを口に運ぶ。味はほとんどなくて、どこか不思議な香り。もしかするとグアバジュース。果物はマンゴスチンだったのかもしれない。
日本から持ってきた千代紙やボールペンをプレゼントすると、サラちゃんは大はしゃぎした。つたない英語だったが、私たちは楽しい時間を過ごした。アフマドさんが奥の部屋に声をかけると一番上のお兄ちゃんが出てきた。私たちは最後に記念写真を撮った。
時間も遅くなってしまったし、私たちは手紙を書く約束をして別れた。もし日本で外国人旅行者と仲良くなったとしたら、こんなふうに家でもてなすなんて、私にはできるだろうか。どうしてこんな家族の時間にただの通りすがりを招き入れてくれるのだろうか。私はあたたかい気持ちで胸がいっぱいになりながら、頭の上に大きな疑問をぶつけられた気持ちだった。タクシーに乗って私たちはホテルに戻った。