ホテルに着いた。デルタピラミッドホテルという大きなホテルだ。外壁が赤と緑の縞模様に彩られていて、ヒダ状に各部屋のバルコニーがデザインされている。独特である。エントランスは大理石でひんやりとしていて薄暗い。照明が少ないのか外の太陽光が眩しすぎるのか、建物の中は薄暗く感じる。赤いユニフォームのポーターの男性が2、3人で出迎えてくれた。彼らはニコニコしてとてもフレンドリーだ。部屋割りは決められていて、私はアラエさんと同じ部屋になった。

部屋に入ると、ベッドの上に妙な形に折り畳まれたタオルが置いてあった。なんだろうとアラエさんと話す。よく見ると、どうやらタオルアートのスワンらしい。かわいらしいベッドメイキングだ。しかし洗面台のコップにヒビが入っていたり、シャワーのお湯が出なかったり、水回りにやや懸念がある。どうしてこれが四つ星ホテルなのだろうかと壁にかけられた星の数を見て不思議に思う。夕方、オプションツアーに申し込んだ人たちは、ピラミッドの光と音のショーに出かけて行った。

クラクションが絶え間なく鳴り、道ゆく人々が大声で話し、ホテルの部屋の中で窓を閉め切っていても聞こえるけたたましさである。中東という場所が気になって、直接見てみたかった。9.11が起きたとき、政治経済の先生が中東問題を授業で取り上げ、夏休みにレポートを書いたことを覚えている。センセーショナルな出来事だと大人たちは言っていたけれど、ニュースはあらゆる出来事をセンセーショナルだと伝えていてそれぞれの違いはもはやよくわからなかった。ただ私にとって驚きだったことは、アメリカに歯向かったり、隣国同士で長期間にわたって大々的に対立を続けていることだった。自分より強い存在に対して当たり障りなくやり過ごしていくのが大人の世界の流儀であり、だから教室では強い意見を察した多数決で意見が決まる。東京の流行を追いかけ、毎日一切身動きの取れない満員電車に詰め込まれて東京に働きに行き、数が多く主流を代表する東京が正義で、自分の地域の文化は存在しない。あるいはとても下位にあって自慢できるものではないことを受け入れるしか選択肢がないと疑うことなくこれまで信じていた。しかしそうではないこともあるのかもしれない、初めて疑問が意識の中に降りてきた瞬間だった。何がどう疑問だとはっきりと言葉にできないけれど、何かがあると思った。

カイロは人であふれている。全ての車からクラクションが鳴っている。信号があるのかないのかよくわからない。クラクションを常に鳴らして車は自身の存在を示そうとしている。警告音としてではなく、呼吸するようにクラクションを鳴らす。そして大声で誰かを呼ぶ。これがカイロの街の音だ。